10年近く、3Dスパイラルダクトを使用したスピーカーばかり作ってきました。 自分でも凝り性だ、よく飽きずにやるよと思うのですが、使い続けるのはその音が良いというのが最大の理由です。
この記事を読んでくださる人はご存知と思いますが、スクリュー形状のスパイラルダクトを作るのは結構面倒です。 固定式のスパイラルはTakenaka氏オリジナルのキャプタイヤケーブル巻き付け方式でもできるので、慣れればそれほど大変ではありません。 でも一度可変式のスパイラルを経験してしまうと、3Dスパイラルの面白さは可変式にこそある、と思ってしまう調整幅の広さ、適用範囲の広さあり、作るのが大変でも固定式に戻る気が起きなくなります。
ディスク式(可変)スパイラル
扇形ディスクを積層してスパイラル形状にする方式です。 ディスクの枚数だけでなく、1枚ごとのひねり角度を変化させることもできるため、ダクト長だけでなくダクト面積も簡単に変更することが可能です。
この後、塩ビ管の内径より少し小さめに外径を削り、スキマテープを外周に貼って、塩ビ管に挿入します。
スパイラルの音の良さ
なぜ使い続けるかといえば、その音の良さにあります。 決して量感があるわけではなく、どちらかといえば同じダクト面積の直管ダクトに比べると量感を抑える方向に働きます。
スパイラルの音の良さを、私なりの解釈で一言でいえば、共振周波数とその上の帯域での音質の一体感、立ち上がり・立下りの早さ、ということになります。
音質の一体感
3Dスパイラルダクトは、一つのダクトで広範囲の音域の共振が得られます。 この効果は厳密な比較試験などを行っていないため定性的な表現になりますが、直管ダクトのピークをダンプしたことで相対的に広帯域になったこともありますが、それだけではなく上の帯域でも直管ダクトにはない振動モードでの共振が発生していると考えています。
一つのダクトで広い周波数帯域で共振があること、つまり広帯域の振動が一体で発生することこそ、3Dスパイラルの音質の一体感に他なりません。 バスドラムのアタックが軽くビシッと決まる、やや口径の大き目のウーハーのような音に聞こえるのもこのためです。
今回のコンテスト応募作品「Tornadefly」で透明塩ビ管を使用して、振動モードを目視できるようにしてありますので、テスト方法を確立できれば、直管ダクトと異なる振動具合が確認できると思います。
立ち上がり・立下りの早さ
普通のダブルバスレフの設計に倣って空気室容積やダクト設計をしてしまうと、この良さは得られません。 3Dスパイラルは長いダクト長をスクリュー形状にして太い管に押し込められることから、振動周波数を低く持ってゆくことができます。 逆に言うと、容積が小さくても同じ振動周波数にできます。 容積が小さくなれば、立下り・立下りの早い、群遅延特性の良好な小型バスレフ的な反応の良いバスレフになります。
加えて、ダンプトバスレフのように立下りが速いので、量感にまかせて尾を引くようなことがなく、キレがあります。 個人的に尾を引く低音はかなり苦手で、特に共鳴管系のエンクロージャで量感重視のものにその手が多く、長時間の視聴は苦痛です。
但し、元々量感では直管ダクトに敵わないのに容積を小さくしたら更に量感が落ちてきてしまいます。 この辺の設計が難しい部分で、いまだに試行錯誤しており、設計の王道に行き着くのはまだまだです。
ダブルバスレフ・ホーン化の可能性
今回のTornadeflyでは、ハイエンド自作スピーカーのkenbe氏が愛用されるBHBS(バックロードバスレフ)式音道を参考に、第一スパイラルをホーン形状としてBHBS風音道とすることで、中低域~低域の音の厚みをアップするようにしました。
第一ダクト・第二ダクトともスパイラルというのは初めてで、更に第一ダクトがホーン形状となることで共振周波数が下がり、ダクト間の共振干渉を避ける調整に時間がかかりましたが、結果としてその調整もほぼ成功といえる程度にまとまって、中低域から低域にかけて、音色の統一された低音が聴けるようになりました。
今後、この方式を更に煮詰めることで、中低域が凹みがちであったダブルバスレフスパイラルの特性向上が期待できると考えます。
3Dスパイラル・直管ハイブリッドダクトの可能性
もうひとつ、Tornadeflyと、昨年の作品「クリアミント」で試した、3Dスパイラルと直管ハイブリッドダクトについて触れたいと思います。
前出したように、3Dスパイラルの共振は主の共振ピークを抑える(ダンプする)働きがあり、量感という面で直管ダクトには敵いません。
しかしスパイラルの広帯域特性は非常に魅力がある・・ならば良いとこどりをしたダクトにしては? と考えました。
Tornadeflyの例で話すのがわかりやすいですが、透明胴体から見える下のほうの第二ダクト入口部分は、100mm径の2条スパイラル、下部前面のダクト開口は75mm系の直管です。
途中、90°曲げる部分に、100mm/75mmの異形エルボにより同断面積で繋げています。 ここはもう相当に色んな形を試してこれに落ち着いたのですが、とにかくスパイラルのスクリュー型の空気の振動を損ねることなく、断面積の変化もいかにスムーズに直管に導くかがポイントで、これが上手になされないと、その間で振動がばらけてしまい、歪感が増したり量感が出なかったりして大変苦労しました。
しかし最終的にシンプルな方式にまとまり、最低域40Hz付近の量感と100Hzまでの低域の質感の良好なバランスを得られました。
最低域が直管なので少々歪っぽいのを除けば、ほぼ(私の好みとしての)理想的な音質・バランスを得られ、今後の 3Dスパイラル・直管ハイブリッドダクトの可能性が広がったと考えています。
まとめ
長くなりましたが、以上のように3Dスパイラルを取り巻く状況はまだまだ進化の可能性を秘めており、私も少しづつ手を入れてゆきますが、この記事を読まれた方もどうぞ試していただければこれ以上嬉しいことはありません。
最後になりましたが、3Dスパイラルオリジナルを開発されたTakenaka氏、BHBS方式の発展に多大な貢献をされているkenbe氏、試行錯誤のしやすいスピーカーを多数公開されてきた塩ビ管スピーカーの会のたてちゅう氏ほか同志の皆さんにお礼申し上げます。
Tornadefly(オリジナルP1000版)に、ツィーターを付加してみるテストをしています。
選んだツイーターは、Dayton AudioのND25FA-4。
横浜ベイサイドネットの通販で、10%オフセールで税抜き1本1,872円。 送料が500円で時間指定で配達してくれるので、単身赴任の身にはとても助かります。
また、Dayton Audioのサイトには、ZMAやFRD形式のデータが公開されていますので、Speaker Workshopにインポートしてみました。2KHz以上が見事にフラットで、位相特性もクセがなく能率も高い。 これで2千円程度で買えるなんてコスパ最高です。
納品されたので早速開梱。高級感こそありませんがプレーンなデザインは好感が持てますね。
とりあえず、手元にある限られたパーツで試してみましょう。 まずは1.56μFと1μFの2種類でSpeaker Workshop でシミュってみました。0.5mHは低い方のカットのために入れているだけで、特性上はほとんど効いておらず6db/Octです。音出しの結果、1μFで十分、もう少し小さくても良いかもです。
ここまできてようやく取り付けです。接続状況はこんなんで何とも試作感満載ですね。FostexのコンデンサCS1.0が4千円近くするので一番高価なパーツだったりします。
音出し3時間程度でエージング途中ですが、なかなか良いです。 上級クラスほどの解像度や音場感は出ませんが、特性通りクセが無く、コンデンサ容量を変えた成りに音が素直に変わってくれます。 位相特性にクセがあるとこうは行かないのです。 欲を言えばもう少し制動感がほしいですね。
来年の塩ビ管スピーカーのオフ会までに、ユニット特性の実測とシミュレーションを行い、きっちり煮詰めていこうと思います。 その頃までにはバッフル板も交換してツィーターをインストールできるでしょう。
本日発売のstereo誌2016年1月号に、先日のスピーカーコンテスト視聴会・授賞式の模様と、各作品への寸評が掲載され、拙作「Tornadefly」も紹介されていましたので買いました。
ところが、いつもは980円なのになぜかこの号は1,500円と。。 特別付録で小冊子が2冊付いているんですが、「究極のヘッドホンブランド27」と、「編集部オススメのセッティング技&音質アップテクニック16」 という、私にとってはちょっと内容の薄いものでして、これでプラス520円は無いかなあ。
さて、家でじっくり読んでいると、予想通り「来場者が選ぶNo1スピーカー」の5位以内に、Tornadefyの名はありませんでした。 はい、私もこの読者が選ぶスピーカーの1位になったスピーカーに投票しましたので、拙作スピーカーが受けないことはよくわかっています。
それでも、各作品に付いた炭山アキラ氏による寸評では、Tornadeflyに嬉しいコメントがありました。
「透明の塩ビ管で内部が見えるようになっているが、DBの2つのダクトがスパイラル形状になっている。よく澄んだ美音で、Dレンジの広さと声のきれいさが印象に残る。低域もさすがによく伸びていた。」
また、写真に添えられた小澤氏のコメントもまた泣かせるものが。「塩ビ管を使い独特なダクト形状ですが、高SN比でオケの混濁がない見通しの良い音でした。テクニカルマスタークラスの音質です。」
最後の一言は褒めすぎと思いますが、苦労が報われた気がします。 皆さん、応援ありがとうございました。 来年は応募できるかまったくわかりません。そもそも付録にスピーカーが付くのか、コンテストがあるのかさえ微妙ですね。
最後に、残念ながら今年の作品群紹介にも夫々の設計図等は一切なく、寂しい報告に終わっています。 個人的には、せめて受賞作品のコンセプトがわかる程度の資料は掲載するとか、視聴会参加者には1次選考書類を配布する等の配慮をしてほしいと思います。
今年のstereo誌コンテストから帰還した、Tornadefly。 まあまあ健闘してくれたと思うのですが、ユニットの力不足からくる低域の歪感、中高域から高域のツブが少し荒いところなど、長時間聴き続けるのは少々辛いところがあります。
そこで、完成時にも試していたのですが、FE103-solに換装してみました。
元々ハイ上がりのユニットに、このエンクロージャ形式では低域が少々不足します。
今回は、アンプのBASSを4dBブーストして録音しました。 4dBといってもある特定周波数での話で、実際はもっと大きくブーストされているかもしれません。
それでも、低域のスピード感と伸び・深さは、なかなかのレベルにあると思います。 高域が少々強調された音源なのでユニットの持つ高域のきらびやかさが全体の印象を決めている部分もありますが長時間聴いてもそれほど疲れる音ではありません。 良質なツイーターには負けます。
なお、録音機材の関係で重低域のレベルが下がって聞こえますので、その辺は補って聴いていただければ幸いです。
音源:Fourplay 「Between The Sheets」より「Gulliver」
再生:
PCM 44.1KHz/ 16bit
ノートPC ドスパラ Diginnos windows8.1 8GB,COREi5-4210M 2.6GHz
Sound Player Lilith ver.0.991
DDC JAVS X-DDC
DAC Accuphase DC-61
AMP Marantz PM-14SA v2
録音:
ZOOM H2n
マイクモード:X-Y方式
フォーマット:48KHz/24bit
先週日曜日に、第8回いすみ健康マラソン(増田明美杯) ハーフマラソンに出場してきました。
数日前から風邪気味で、今一つ気持ちが前に出なかったのですが、ラン仲間のS水氏と走れることと、女性応援団の声援を受けて途中からやる気満々に。
折り返し直後には、増田明美さんが待っていてくれて、私もハイタッチしていただきました。
中盤は無理せず、苦しくなったら少しだけスピードを落として、フォームを崩すことなくリラックスして走り続けることに注力した結果、最後の2キロを5分切るペースで走り抜けることができました。 走っている時は苦しくて、もっと遅いと思っていたので、 GPSログ:GarminJogNoteを見てビックリです。
結果
ハーフ自己ベスト4分更新!
種目別順位 151/432
総合順位 624/2005
いやあ、嬉しかったですね。 レース後の打ち上げでも、湘南国際フルで自己ベスト更新されたM村氏とともに上機嫌でした。いすみを走ったS水さん、W田さん、車を出していただいたH野さん、応援団の皆さん、感謝です、ありがとうございました。
一方で、一緒に走ったS水氏はふくらはぎの肉離れが悪化して途中で失速しつつ1時間28分台でゴールしていました。 でも本当に痛そうで、きちんと病院に行くように説得しました。
風邪もそれほど悪化してないし、楽しかった、応援の皆さん、本当にありがとう! と嬉しい気持ちで翌週の仕事に臨んでいたところ、火曜日から右足太もも裏に強い痛みが発生。 水曜日には激痛に変わり、歩くのもままならない、階段は左足でしか登れない、座って立ち上がる時に特に痛い。 車の運転姿勢が辛いので通勤が恐怖、などなど、職場の皆さんにも心配かけるやら慰められるやらで大変でした。
その後、木曜日の午後から痛みが引きはじめ、結果的には金曜日に休みをもらって整形外科を受診して、おそらく筋肉痛の一種だろう、バランスの悪い走りが原因? ということで、大事には至りませんでした。
思えば、今回から着地時の反動を素早く反対側の骨盤移動に移すフォームにしていて、とてもリラックスして走れるのでタイムも上がるのだが、 膝の負担を乗り越えた後に別の部分に負担がかかっていたのではないかと。 途中、着地側の骨盤を前に出すような崩れたフォームになったことがあり、それも痛めた原因のような気がします。
そしていつものように風邪も悪化し気管支炎に。。 かかりつけのクリニックで気管支拡張用の吸入器も出たので、ハーフマラソン1回の参加費分の痛い出費でした。
ともあれ、なかなか充実したランニングとの付き合いが出来ているので、幸せですね。